『月と六ペンス』はイギリスの大作家サマセット・モームの小説である。死後に「天才」と評される画家の後半生を綴った物語。本書を読んだ私の感想は「言葉では表せないのに、スラスラ読んでしまった」であった。
本書について
著者:サマセット・モーム
出版社:新潮文庫
個人的満足度:★★★★☆
不可解な人間
「ストリックランドも、傑作だとわかっていたでしょうね。求めていたものは得られ、人生は完結した。ひとつの世界を作りあげ、仕上がりに満足した。そして、誇りと嘲笑をこめて、完成した世界を破壊したんでしょう」(p358)
これは私が心に残った文章である。
芸術家とは理解不能の生き物だと思った。安泰な生活と家族を捨て、いくら貧しくなっても芸術に人生を投げ出すとは理解し難い。
現代にも、仕事を辞めて新たな挑戦を始める人は一定数いる。実際、自分が一流企業にいても、仕事を辞められる人間はどのくらいいるだろうか。
それが芸術家、いや成功者なのだろう。
【英文学・芸術・愛・欲・新潮文庫】