基本情報
初版:2004年
出版社:新潮文庫
ページ数:332ページ
難易度:★★☆☆☆
おすすめ度:★★★★☆
どんな本?
18歳の女の子が死に至るまでの3ヶ月をリアルに記した本。そして著者のブログをもとに、彼女の死後出版されたものである。
リストカット、クスリ、援交、、、。
ハードな若者の強がりをポップに描く。時代は違えど、その主人公は私だったのかもしれない。そのように共感することのできる、悩める若者は多いだろう。
著者が伝えたいこと
18の女の子の孤独と憂鬱の叫び。
これは私の都合の良い解釈だが、SNSが発展した現代にも同様の精神構造が溢れているのかもしれない。
著者
中学1年生の頃からリストカットをするようになり、晩年には慢性化していた。
卒業式を終えて20日後の1999年3月30日正午ごろ、一人で下北沢のカラオケボックスに入店し、その後3時間の間に向精神薬を大量に服用し昏睡状態で病院に搬送。蘇生処置を受けたが、その後死亡した。様々な見解はあるが実質上「自殺」とみられている。(Wikipediaより引用)
こんな人におすすめ
- 生きるのに疲れた人
- 子どもと関わる仕事をしている人
要約・あらすじ
本書では度重なるグロテスクで凄惨な描写が出現する。
しかしその乱れた精神状態とそれを隠そうとするから元気な語り口調が、不安定な若者を際立たせている。
今回はその一部を引用したい。
家で、悩んで悩んで、明日からどうやって学校で生活しようと窮していたときに「私が自殺したいほど悩んでいるって分かれば、みんなも少しは同情してくれるんじゃないか」という汚い考えのもとに、最初のリストカットが始まりました。(『卒業式まで死にません』p18)
これは著者が中学に入学していじめを受けての反応です。
私はリストカットまではしたことないが、「同情を誘うアピール」をしたことはある。
若者だけでなく、大人でも多いのではないか。仕事でミスを犯したから体調が悪いフリをする。
これが彼女の場合はリストカットだったわけだ。
これから彼女は自殺未遂をしたり、クスリを大量に服用したり、、、。
驚くべきことに、日記には服用したクスリがこと細やかに記載されているのが、ちらほら見られる。
その時の眠剤はリスミー2T、メレリル2T、ホリゾン2T、エバミール2T、ソラナックス3T、セパゾン2T、トリプタノール2T、サイレース1mg。ちゃんこ鍋状態のメニューでした。(同書 p54)
このクスリ自慢やリストカット自慢のようなものは若者に身近なものに感じられる。
現代におけるnstagramで飲酒やバイトの迷惑行為をストーリーズに上げるようなものなのだろう。
本書を通して読んでいると、現代の若者とも共通するような精神構造が記載されている。
管理人のつぶやき
人間の精神構造は昔から変化していないのだろう。
だからこそ、本書の乱れた記述をよりリアルに感じることができ、共感できるのだろうな。