ryobook-豊かな人生のために

管理者のryoと申します。高校生で読書にハマり、多様なジャンルの本を乱読してきました。読書の面白さや好きな本を伝えたいので、当ブログを開設しました!読書だけではなく人生を好転させられるような情報も更新していきます。今後ともよろしくお願いします!!

『オスマン帝国 英傑列伝』小笠原弘幸|大帝国の表も裏、歴史と人間

先日トルコ・シリアにて大きな地震が発生した。死者は4万人を超えるという大地震であった。連日ニュースで目を背けたくなるような映像が流れている。

トルコ共和国は主に西アジアアナトリア高原と東ヨーロッパのバルカン半島最南端の東トラキア半島に位置する、アジアとヨーロッパの2大陸にまたがる国家である。特にアナトリア高原には多くの民族によって支配された歴史を持つ。

その中でも代表的な国として、トルコ共和国の前身となったオスマン帝国があろう。

オスマン帝国は600年を超える歴史を持ち、ヨーロッパにも度々影響を及ぼしてきた。近代を代表する国とも大航海時代の幕開けの背景とも言われたりするくらいだ。

この世界に多大な影響をもたらしたオスマン帝国を知ることはトルコ共和国を理解することにもつながるのではないか。

 

という仮説のもと本書を買ったはいいが、オスマン帝国を理解するだけならば、適当にWikipediaで調べれば良いのであって、わざわざ本書を手に取る必要はないと思われる。

ではなぜ、私が本書を買って読んだのか。

それは歴史の面白さは人間ドラマであると思っているからであり、本書は人間ドラマを楽しむには最適な本であったからである。

 

著者:小笠原弘幸

出版社:幻冬舎新書

個人的満足度:★★★★☆

本書の著者はオスマン帝国史やトルコ共和国史を専門とする方で、本書の他にもオスマン帝国やトルコに関する著本をいくつも出版されている。もし興味があったら他の著書も覗いてみていただきたい。

 

歴史は小説である

これは流石に言い過ぎと思われるかもしれない。だが本当にそうだろうか?

そもそも歴史を記述するのは歴史家であり、彼らによって歴史は異なる。例えば、ある歴史家はある国を悪者として描くが、別の歴史家はその国を正義として讃えることがある。また、ある時代には賞賛されていた人や物が、時代が変わるにつれて酷評されることだってある。したがって歴史は絶対的なものではないと分かるだろう。

確かに、真実を追い求めるのは良いことであると思う。しかし現実には隠蔽や工作が行われているのも事実であり、正しさは再現できるものでないのかもしれない。それは歴史家が悪いのではなく、歴史家が人間だから起こることである。だから仕方がないとも言える。

 

そこで私は歴史を人間ドラマとして楽しんでいる。英雄がいれば、悪者もいる。この人と人、国と国の交わりを楽しむのである。それは本質的には小説を読んで楽しむのと変わらない。だから私は「歴史は小説である」と言ったのである。

 

大帝国の表と裏

では本書について話を戻すと、本書の良いところは、時代の英雄だけでなく、取り上げられることのない芸術家や女性についても触れているところである。スルタン(指導者)だけを語らない点が素晴らしい。つまり「歴史は英雄だけではない」ということを示しているのである。

近年、「マイノリティーの歴史」が語られるようになっている。それはとある民族の歴史や女性の歴史、市民の歴史などである。特に国の発展を支えた者たちの歴史に価値を見出す人がもっといていいのにと思う。

個人的にはイスラームの画家については無知だったので、彼らを知れて良かった。それと本書には参考文献が多くあるので、気になった人については踏み込んで調べていきたい。ちなみに私はミマール・スィナンが気になる。

 

歴史が教えてくれるモノ

歴史が教えてくれるモノ。それはズバリ人間であり、これは現代にも応用がきくモノである。人間関係を学ぼうと思うのであれば、しょうもないコミュニケーション論の本やビジネス書を読むより、よっぽど為になる。人は何をすると怒り、何をすると失敗するのか。それを教えてくれる。

人間は何百年、いや何千年も変わらず、権力が大好きなのである。これをもとに歴史を読むと見える世界が変わってくるのではないか。

 

 

オスマン帝国イスラーム幻冬舎新書