江戸中期、財政危機に瀕していた米沢藩で斬新な改革を成功させた上杉鷹山。現在の日本人があまり知らない偉人である上杉鷹山はどのように改革したのか。
本書について
著者:竜門冬ニ
出版社:PHP文庫
初版年:1990年
本書は彼の人生を軸に経営方法を見ていく構成となっている。初版から30年以上、上杉鷹山の時代からは何百年も経っていながら、本書の内容は現代に応用できるものであった。
彼の理念を一言で表すと「仁義礼智信」で、これは儒教の中心的な教えである。が、本場の儒教とは違って五輪と呼ばれる身内贔屓の徳を重視しなかった。それどころか家臣を信じ国全体を富ますことを考え実行した。しかし江戸時代では朱子学に習って「主君には逆らうな」みたいな制度があった。これは江戸幕府が権力を保ち続けるためで自分たちが富み続けるためである。我々も幕府側に立てば当然、権力や富を維持したいと思う。しかし上杉鷹山はしなかった。コレが一つの大きなターニングポイントとなった。
前に私が「本書の内容は現代にも応用できる」と言ったのは、現代こそ「権力にしがみつく」人間が多いからである。ぜひ、リーダー職の方々に読んでいただきたいのだが、今こそ権力にしがみつかず、国民のために「仁義礼智信」の経営理念を持つべきなのだと思う。自己中心的な雰囲気に溢れかえる現代こそ。
最後に名言を載せておく。
顧客こそ主人であって、企業員はこの顧客に奉仕するものである。なぜならば、企業員の生活費は、顧客から与えられるものなからである。(p204)