元祖・読書本として有名なショウペンハウエルの『読書について 他二篇』
当記事では本書のおもしろさをお伝えする。
ただし、『読書について』本編の要約などはYouTubeなどでも沢山転がっているので今回は割譲させていただく。
本書について
著者:ショウペンハウエル(ショーペンハウアーとも呼ばれる)
訳者:斎藤忍随
出版社:岩波文庫
個人的評価 ★★★★★
主張がはっきりしていて読みやすい。また、笑いどころが多いので楽しく読めるのでおススメ。
自分で考えろ!
本書での主張は「自分の頭で考えろ」だと思う。
『思索』においては、
いかに多量にかき集めても、自分で考えぬいた知識でなければその価値は疑問で、量では断然見劣りしても、いくども考えぬいた知識であればその価値ははるかに高い。(p5)
とある。
ここからも分かるような著者は自分で考えることが最も価値があると言っている。
また思索のプロセスも載っていて、
- 自説←1番大事!
- 外的学び(読書とか)
- 自説の強化
となっている。
著者は、思索していない思想が世に溢れかえっていることを批判している。
本書は悪口本である
ここからが本書のおもしろい点である。
思索していない思想(著者によると価値のない思想)への悪口が『著作と文体』において爆発する。
一部を抜粋する。
現在、非良心的な三文文筆家が巷にあふれ、無用な悪書がいよいよ氾濫きて悪徳を撒き散らしている。(p42)
無能著作家が拙作を発表し、頭はからの連中が空の財布を満たすため、書き殴りに励み、その結果、出版図書のほとんど九割までが悪書駄作の始末である。(p42)
劣悪な著述業者、才気乏しい編纂者、他人の書物を盗用する剽窃屋、頭は空で無能なくせに地位に飢えかつえた似非哲学者、霊感を欠いているのに気取りだけは一人前の月並み詩人(p44)
大手哲学者が、たった3ページにこんな悪口書いている事実がおもしろくないか?しかも、この語彙力。ちなみに私は大爆笑しながら読んだ。
あの作文技術屋たち(p65)
これもお気に入り。
またドイツの哲学者である、フィヒテ、シェリング、ヘーゲルに対しても批判している。
ここから私の想像が始まる
哲学者の人間味
実はショウペンハウエルがヘーゲルを憎んでいたという話がある。
同じ大学の講師だった2人だが、ヘーゲルは人気講師。対するショウペンハウエルはヘーゲルの人気に対抗して、「酒場のおやじのような顔」と言ったり、講義時間をヘーゲルと同じ時間に設定したが、ショウペンハウエルの講義がガラガラだったというものだ。その半年後にショウペンハウエルは講師を辞めてしまったらしい。
このエピソードからもヘーゲル批判からは人間味が感じられる。可愛い。
少し著者のことを好きになった。
【読書論・西洋思想・岩波文庫】